HbA1cについて.その④
糖尿病では,HbA1cが高いといろいろな合併症が起こりやすくなります.
そのため,HbA1cを下げると,どれぐらい合併症を予防できるのか
治療効果を調べた研究がいろいろあります.
1990年代前後に発表されたいくつかの大規模な研究では,
HbA1cが8~9%ぐらいの患者さんの集団を,7%ぐらいまで下げると
眼(網膜症)や腎臓(腎症)の合併症は,しっかり予防できたけれど,
心筋梗塞の危険は,そこそこ抑えられるが充分予防できてたとまでは
言えないと報告しています.
その後,これらの研究結果を踏まえ,
HbA1cを7%よりももっと下げれば,心筋梗塞もしっかり予防できるのではと考え,
HbA1cを6%未満を目標にした研究が行われました.
すると困ったことに,しっかりHbA1cを下げた患者さんの集団の方が
死亡者が多くなってしまい,この研究は中止されました.
よくよく調べてみると
血糖値を急に下げすぎて低血糖をたくさん起こしていたことがわかりました.
薬やインスリンをたくさん使用して,急激に血糖値を下げるのではなく,
低血糖の危険を少なく安全に血糖値を下げなければならないとの考えが
再認識されるようになりました.
患者さん個々の状態(年齢や合併症の状態,低血糖の起こしやすさなど)から,
目標にするHbA1cを設定して,より安全な薬の選択,インスリンの量の調整が必要です.